2022.09.01 | おたより今月の園だより

9月 園だより

カラスの恩返し

園長 塚本吉興

「主は天を雲で覆い、大地のために雨を備え、山々に草を芽生えさせられる。
獣や、烏のたぐいが求めて鳴けば、食べ物をお与えになる。」

詩編147編8-9節

ある日曜日の早朝、教会駐車場の方でギャーギャーとカラスが鳴く声がします。何があったのかな、と半分、冷たくなった猫が転がっているのではと思いながら、恐る恐る駐車場の出口に向かいます。すると、隣の結核予防センターの駐車スペースにコンクリートで埋め戻した工事の跡があり、その四隅にはカラーコーン、そして、粘着テープがロープ代わりにコーンを繋いでいます。そこに何があったのか、一羽のカラスが粘着テープに翼が絡まって抜け出せない状態で、バタバタ、ギャーギャーと騒いでいます。近くのビルの屋上にはびっしりと仲間のカラスがとまって、こちらもカァカァ、ギャーギャー、大騒ぎです。野良猫も2,3匹、心配そうにというよりは、「このカラスって食べるべき?」といった感じで遠巻きに見守ります。それを見た私は、ほっとすると同時に昔話に出てくるおじいさんになったような心境で、「あれあれ、カラスや、こんなところでワナに捕まってしもうたのかい。ささ、すぐに助けてあげよう。」と、倉庫にあったバスタオルを持って来て、カラスの体を覆ってくちばしを押さえ、粘着テープを取ってあげました。すると、カラスは大きく羽ばたいて、飛んで行ってしまいました。その夜、黒い着物に身を包んだ美しい女の人がやってきて、これを売って教会の献金にしてください、と見事な真っ黒の反物を差し出して・・・みたいなことは、もちろんありませんでした。

「カラスは賢い」と言われます。生ゴミを漁ることや繁殖期の行動から、「怖い、汚い、迷惑」と嫌われる動物の代表格です。でも動物行動学者で「カラス屋」を自負するカラス研究家の松原始さんに言わせると、カラスはとっても賢い反面、「アホー」なところもあって、ユーモラスで興味を引く存在なのだそうです。コミュニケーション能力も高く、40種類ものバリエーションの鳴き声を使って互いに会話をするカラス、改めてまじまじと見ると、どことなくその顔も愛らしい?

子どもたちの大好きな絵本に、かこさとしさんの「からすのパンやさん」があります。一度、鹿児島の絵本美術館で原画展を見たことがありますが、工学博士ならではの精緻な作画とセツルメント活動(貧困地域で住民に働きかけ、その生活の改善を図る社会活動)を通して、小さな子どもたちと日常的に触れ合っていたからこそ培われた、温かい眼差しを感じ、とても感動しました。カラスも「からす」と書くとより親しみが湧くような気がしますし、何よりもパン屋さんはページいっぱいに広がる色とりどりのパンの絵を見ただけで、その香りが漂ってくるような気がして、大人も子どものお腹がすいてきます。(まさに今も!)神さまは、カラスを造り、養ってくださいます。カラスがユーモラスでユニークな存在であるのは、神さまがどんなお方であるかということを表しているのです。身近なところに神さまの創造された世界のすばらしさ、美しさ、不思議さを感じながら、幼稚園の2学期がスタートします。

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